毎日が発見ネット - ワラウ

店の者・猪作に帰りが遅いと怒鳴られた弐吉。意地悪された不満を一気に口に出す/成り上がり弐吉札差帖

2024年4月10日

  • 江戸の裏長屋暮らしだった少年・弐吉は、直参の侍が働いた狼藉により両親を亡くし天涯孤独に。以来、弐吉は家族を奪った武家への強い恨みを胸に持ちながら、札差・笠倉屋で小僧奉公している。切米の日、米俵運びに忙殺されていた弐吉ら小僧たち。そんななか弐吉は、荷運びの指図をしていた猪作から意地悪され奔走し、空腹で疲弊しきっていた。その帰り道、商家の主人が斬られた現場に出くわし――。『成り上がり弐吉札差帖』(KADOKAWA)は、知恵と根性を武器に、札差の世界でのし上がっていく若者の出世奮闘記です。


    ※本記事は千野隆司:著の書籍『成り上がり弐吉札差帖』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。


    nariagarinikichi.jpg

    『成り上がり弐吉札差帖』(千野隆司/KADOKAWA)


    第一章 消えた侍



    表通りの笠倉屋の戸はすべて閉じられていたので、弐吉は裏から建物に入った。魚油屋吾平殺しの調べのために引き止められ、すっかり遅くなってしまった。腹も減っていた。

    続きを読む